メディアGCAI
あなたの仕事の中に、暮らしの中にある
「グローバル・パブリシティ」のヒント

世界に”Kawaii”を認めさせた日本人

2016.9.20
2016年8月にサンフランシスコで行われた日本のポップカルチャーを発信するイベント「J-POP Summit」で注目を浴びていた1人が、NHK Worldの番組『Kawaii International』でアートディレクターを務める増田セバスチャンさん。きゃりーぱみゅぱみゅをはじめ、彼が生み出し、海外に発信してきた日本の”Kawaii”カルチャーは、世界の人たちに衝撃を与え、心を掴んできました。「なぜ実現できたのか?」や「成功のカギとは何か?」などをご本人に聞きました。
日本のポップカルチャーを世界に発信して、実際に届ける。その秘訣はありますか?
意識していることはいくつかあります。例えば、グローバルな視点で考えることです。国内で流行っていても、海外では全く流行っていないことがあります。世界で何が流行っていて、どういうものが求められているのかを考えることが大切で、また日本独特の世界観を海外の人たちが理解できる「言語」を使って伝えるように意識していますね。「言語」というのは、言葉ではなくて「ビジュアル」のことです。言葉の壁を飛び越えて、世界中の人がすぐに認識できますから。
以前、別のインタビューで「日本のコンテンツを発信していきたい」と言っていましたが、そう思ったきっかけは?
20年前、原宿の人たちに響いたものが日本全国でも通用することが分かりました。次に世界でやったらどうなるのかと思って挑戦したのが最初です。
それに、日本の人たちよりも先に海外の人たちからメールが来て、まるで神のように崇めてくれた時は、何が起きたのだろうと思いました。
世界の人たちが反応してくれて、支えてくれたのが、海外に発信したいと思うきっかけの1つになったと思います。
増田さんがプロデュースされた原宿の「KAWAII MONSTER CAFE」が海外からの観光客に人気のようですね。
はい。お客様の50パーセントはインバウンド(訪日外国人旅行)のお客様です。伝統的な着物や寿司などは海外の人たちにすでに知られているので今さらという印象を与えてしまいます。海外の人たちが何を求められているのかというと、「現代の日本」なのです。彼らは今まで作り上げてきたガラパゴス化した日本が面白いから、それを知りたいと思っているのです。「KAWAII MONSTER CAFE」は、少し先をいったもので、みんなが理解しづらいものを目指して作りました。
「少し先」を行くというのは、ご自身の感覚ですか?
「少し先」というのは、どこかで見たことがあるもののことで、それを少しだけ取り入れることが大事です。「すごい先」に行くと誰にも理解してもらえないですからね。どこかに理解できるものが入っていないと読み解くことがでません。日本は海外で流行ったものを取り入れがちですが、これからはオリジナルを海外に売りつけるくらいでないと、日本のカルチャーが発展しないと思います。
Facebookは英語、Twitterは日本語で発信されていますが、戦略的な理由はあるのですか?
最初、Myspaceをやっていた時に英語圏の人向けに作っていたので、それがそのまま続いている感じですね。Twitterは日本の人たちが読むので日本語にしています。Facebookは
自分で書いています。僕の活動は、日本で作り上げてきたものをどれだけの人に耳を傾けてもらい、広げるかということなので、それだったら世界基準でやったほうがいいかなと思いました。僕自身は、英語が流暢なわけではないので、翻訳ソフトを活用しています。

2020年を境にアメリカを拠点に活動していくつもりなので、もっと英語をやらないといけないんです。こっちに来るたびにそう思います。
J-POP Summit(※)は立ち上げから関わっていますよね?
当時、日本を紹介するといえば「和太鼓」や「着物」などの伝統的なものが多くて、”Kawaii”などはまだ認知されていませんでした。そこで、このイベントでは、今のリアルな東京のファッションやカルチャーを見せることにしました。
J-POP SummitのNHK Worldのブースで
トークイベントを開催
1回目と今では会場やお客さんの雰囲気も違いますか?
だいぶ違いますね。最初はジャパンタウンで開催して、来場者は1万人くらいでした。それが年々増えていって、今では日本のポップカルチャーに興味を持ってきてくれる人たちが多くなって2015年の来場者は3万人以上で、前より規模も大きくなりましたね。
海外に何かを発信・PRしたいと思っている人たちにアドバイスをいただけますか?
僕自身も何もないところから始めました。頭の中だけでイメージするよりも、海外に来て、現地の雰囲気を肌で感じて、一体何が求められているのかを知ることが一番大切です。自分がやりたいことを発信するのは、時代とニーズが合致しない限り難しいですし、日本で流行っているものが海外で流行るとは限りませんからね。特にアメリカは広いので、どこの都市で発信するのが効果的なのかも見えてくるはずです。まずは一歩踏み出して、自分の足で見ることが必要だと思います。
今後、もっと世界に発信してみたいものやコンテンツはありますか?
海外ではアーティストとして活動していく予定なので、アート作品をどんどん作って発信していきたいと思いっています。
ワークショップでは参加者ともコミュニケーションをとる増田氏
※J-POP Summitとは
2009年にサンフランシスコでスタートした日本のポップカルチャーを紹介するイベント。毎夏、日本を代表するアーティストがライブパフォーマンスを行い、日系企業が各種商品やサービスを現地の人たちにアピールし、日本の文化を発信する場となっている。2016年は、3日間で2万人の来場者数を記録した。
増田セバスチャン
アートディレクター/アーティスト/6%DOKIDOKIプロデューサー。1970年生まれ。演劇・現代美術の世界で活動した後、1995年に"Sensational Kawaii"がコンセプトのショップ「6%DOKIDOKI」を原宿にオープン。2009年より原宿文化を世界に発信するワールドツアー「Harajuku"Kawaii"Experience」を開催。2011年きゃりーぱみゅぱみゅ「PONPONPON」PV美術で世界的に注目され、2013年には原宿のビル「CUTE CUBE」の屋上モニュメント『Colorful Rebellion -OCTOPUS-』製作を手がける。 2014年に初の個展「Colorful Rebellion -Seventh Nightmare-」をニューヨークで開催。NHKワールドTVでオンエアされている番組『Kawaii International』ではアートディレクターを務める。

公式サイト
http://m-sebas.asobisystem.com/

『Kawaii International』公式サイト
http://www.nhk.or.jp/kawaii-i/
Facebookシェアボタン  Tweet about this on Twitter

Facebook

Instagram