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なぜ「一蘭」は外国人が行列を作るのか? SNS・オーダー用紙・コミュニケーションの秘密

2017.3.06
香港、米ニューヨークと海外にも店舗を展開し、グローバルな人気を獲得している天然とんこつラーメン専門店「一蘭」。都心部の店舗を訪れると、さまざまな国の人がズラリと行列を作っています。なぜ、「一蘭」はここまで外国人のファンが多いのか? SNSの活用、商品の魅力をグローバルに届けるコンテンツ、そして、外国人に「また来たい」と思わせるグローバルコミュニケーションに秘密があるようです。

東京の原宿店店長・韓さんに話を聞きました。

来店した外国人客が自らの視点で一蘭の魅力をSNS発信

――「一蘭」を訪れると、本当に外国人の方が増えたな、と感じます。
海外からのお客様は、特にこの3、4年で急激に増えたように思えます。日本を訪れる観光客の方が増えたことによるのでしょう。それに加えて、SNS上の口コミが大きな効果を生んでいるようです。当店で召し上がっていただいた海外からのお客様は、帰国後、SNSを使って口コミを広げてくださるんです。国によって使用されるSNSは異なります。例えば、台湾の方はFacebook、中国の方はWeChatで、「日本に行ったら絶対(一蘭に)行くべき!」とご自身の視点で同じ国の方たちに情報を発信してくださいます。だからこそ、より広く、分かりやすく魅力が伝わるのではないでしょうか。
――そうなんですね! 特に、どの国の方が多いと感じますか?
本当に、世界中からご来店くださっています。特に多いのはアジア圏の方です。中国、台湾、香港…、最近は韓国の方もたくさんお越しくださいます。一方で、欧米からのお客様はアジア圏の方々と比べるとまだまだ少数ですが「一蘭」は昨年10月に米ニューヨークに店舗をオープンしました。今後はますます、アメリカからのお客様もいらっしゃるのではないでしょうか。

商品をグローバルに伝える「オーダー用紙」というコンテンツ

――海外のお客様に対応する際、工夫していることがあれば教えてください。
さまざまな国のお客様にご理解いただけるよう、ご案内の表記を日本語、英語、中国語、韓国語にて対応させていただいております。例えば食券機。ボタンの一つひとつにメニューが書かれていますが、4カ国語で内容を記載してございます。当店では“味の濃さ”や“こってり度”などを、オーダー用紙で選択できるようになっておりますが、こちらも日本語以外に、英語、中国語、韓国語で表記されたものをご用意しております。
――なるほど。まさに、一蘭のラーメンをグローバルに伝えるPRコンテンツといえますね。これがあれば、日本語が分からない外国人の方でも、自分がどんなラーメンを食べられるのか明確に分かります。

英語や多言語を駆使したグローバルコミュニケーション

もう一つの工夫が、お客様とのコミュニケーションです。お客様がお待ちの間に、声をかけさせていただいて、どんな国からいらしたのかを伺います。まずは「いらっしゃいませ」とお声がけし、分からないようであれば「Where are you from?」と。私は英語のネイティブではありませんが、簡単な言葉でも、それでお客様がどこから来たのかが分かります。その後、中国から来た方なら中国語で、韓国の方には韓国語で、と言葉を切り替えて対応をさせていただいております。
――簡単な英語でも、お客様に寄り添おうとする韓さんのコミュニケーションが心に届いているのだと思います。実際、私も店頭でそんな様子を見てとても感動しました。口コミで広がっていくのも納得です。きっとリピーターも多いはずですね。

さまざまな国の人に喜ばれる仕事の楽しさとやりがい

――本当に、さまざまな国の人が「一蘭」を訪れているんですね。今の仕事のどんなところに面白さを感じていますか?
「一蘭」の天然とんこつラーメンは、本当に、自信をもって世界にお届けできるラーメンだと思うんです。実際に、アンケートを見ると海外から来たお客様から「本当においしい」「一蘭のラーメンを食べるために日本に来た」といった声をいただいております。そんな時、仕事が楽しいと実感しますし、「一蘭」を大変誇りに思います。

一つ、エピソードがあります。あるカナダ人のお客様が原宿店を訪れた際に、「原宿にも一蘭がある! 日本のいろいろな地域にあることは知っていたけれど、ここにもあるなんてすごくうれしいよ!」と、大きくガッツポーズをしながら私に語ってくださいました。仕事にやりがいを感じた瞬間です。

お客様の文化を学ぶ姿勢が心から喜ばれるアイデアを生み出す

――GCAIは、商品の魅力やサービスをグローバルに伝えることができる職能を持った人、「グローバル・パブリシスト」を養成する学校です。「自分もグローバルに商品の魅力を伝えたい」と考える人に、アドバイスを送るとしたらどんな言葉が浮かびますか?
お客様の国との「文化の違い」をただ知るだけではなく、さらに自分から主体的に学び、ちょっとしたスキルを身につけていく姿勢が大事なんじゃないかと思います。そうやって“違い”を明確に把握することで、より外国人のお客様の視点に立って伝えることができます。お客様の国の文化を学んでいれば、その方が本当に喜ぶようなアイデアも出せるのではないでしょうか。
――“英語を流ちょうに話す”ことだけが、グローバル情報発信ではないんですね。ほんの少しの言葉や工夫で、感動を与えることができると、改めて分かりました。
韓成徳
かん・せいとく●韓国語ネイティブの家庭に生まれ、中国で育つ。日本の文化や伝統、エンターテインメントに興味を抱き、19歳の時に日本を訪れた。現在は「一蘭」原宿店の店長として接客から調理、店内の設備、従業員の育成などを受け持つ。好きな漫画は『SLAM DUNK』『ONE PIECE』『NARUTO -ナルト-』。

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