【リーダーからのメッセージ】エデルマン・ジャパン社長 ロス・ローブリー氏
2016.8.18
近年、企業・団体・政府は、ステークホルダーと積極的にコミュニケーションを取る必要性が増しています。インターネットによって情報の民主化が進んだことや、ステークホルダーからの情報提供などが行われるようになったことで、両者の間で信頼関係の欠如が起こっているからです。こうした状況下では、組織・ブランド・個人は、ステークホルダーに対して「信頼」を“稼ぐ”行動が必要になります。広報的に言えば、相手に自分を深く理解してもらい、相手の心を掴むためのコミュニケーションスキルが必要になってくるのです。デジタル社会の現在、情報を発信することが昔よりずっと簡単になりました。どの企業・組織もメディアになることができます。それは「発信」を期待される時代でもあり、誰もが広報マンにならなくてはいけない時代なのです。
また、今では言葉の壁が崩れ、国内向けに発信した情報が、自動翻訳されて海外メディアで取り上げられるといったことが起こっています。ハイコンテクスト文化の日本では伝わる情報も、ローコンテクスト文化の海外では、背景を説明しなければならないため、日本語で発信した情報が情報不足とみなされてしまうこともあり、誤解を招くリスクもあります。情報のグローバル化が進んだ今、こういった現状を理解した上で情報発信できるグローバル広報人材がますます求められているのです。
グローバル広報人材に必要なこととして、2つのことが挙げられます。まず、常に高い知的好奇心を持つこと。広報の役割は社会と組織の接点になることです。情報もコミュニケーションも物凄いスピードで変化している今、世界で何が起きているのか、何がトレンドなのかといったアンテナを張って仕事をすることが重要です。もう一つは、失敗を恐れないこと。日本人の国民性としてなるべく失敗はしたくない、完璧に極めたいという気持ちが強い。すると、「失敗したくないから何も言わない」となってしまう。失敗の怖さを捨てて、挑戦することが大事です。
グローバル広報というテーマは、非常に幅が広い。16回の講義で網羅することは不可能に近いでしょう。だからこそ、一番重要なポイントを押さえることを心がけました。また、コミュニケーション環境は日々変わっているので、時代にマッチした内容であることと、日本と海外の違いをうまくキャッチしたものであることにこだわりました。例えば、SNSのLinkedIn。日本では転職サイト的なイメージが強いですが、海外では重要な情報発信のプラットホームになっています。一つの例ですが、このような違いを学べる内容にしています。
ロス・ローブリー
オーストラリア出身。複数の証券会社で上級管理職を経験した後、1995年にPR業界へ。ギャビン・アンダーソンのマネージング・ディレクターとして、M&Aや外資系企業の日本市場参入キャンペーンなどを手がける。プラップ・ジャパン専務取締役兼COOを経て、2010年より現職。外資系企業のみならず、国内企業のグローバル広報戦略の実現に向けたアドバイスを提供。