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情熱はボーダーを越える! 日本のジャズスポットの素晴らしさを世界へ!

2015.10.05
ジェームス・フセイン・キャッチポールさんは日本在住歴15年。東京のジャズスポットを紹介するサイトとして在日外国人に人気の「Tokyo Jazz Site」を運営するほか、国内外の新聞や雑誌、Podcastなどで日本のミュージックシーンやイベントを紹介しています(GCAIでは、「バイリンガルラジオDJに学ぶコミュニケーション術(仮)」の講座を担当)。出身地であるニューヨークのブルックリンには移民の人たちが多く、子どもの頃からさまざまな国籍の人たちと接してきたと語るジェームスさんに、グローバルなコミュニケーションで必要なことは何かを聞きました。
ジェームスさんが日本に来たきっかけと日本語を身につけた経緯を教えてください。
僕は10歳から3年間、父の仕事の関係で韓国のソウルで暮らしました。この時、父がアジアのさまざまな国の人たちを自宅に連れてきたので、日本にも自然に興味を持ったんです。そして、アメリカの大学に通っていた時に、日本の文化や歴史などを学びました。その後、1997年に英語学校の教師として初めて来日しましたが、その時はまだ全く日本語が話せませんでした。当時は埼玉に住んでいたのですが身近にあまり外国人がいなかったので、役所へ行っても「外国人だ、困ったな」という表情をされることが多かったのを覚えています。来日から1年半後、全日制(1日4時間)の日本語学校へ2年通い、日本語能力の試験に合格。その後イギリスの大学院に2年通ったあと、2004年に再来日して早稲田大学の大学院で研修生として学びました。
その後、2007年に「Tokyo Jazz Site」を開設したんですね。
日本へ来た頃は全く日本語が分からなかったので日本語のサイトを利用できず、東京でジャズバーなどを探すのにとても苦労しました。電話では「ラーメン屋さんを右に曲がってコンビニを左ね」と言われても、いざ駅に降りてみたら、ラーメン屋もコンビニもたくさんあって目印にならない(笑)。1時間歩きまわっても辿り着かないこともあったし、逆に迷っている途中で別のジャズバーを見つけたこともあります(笑)。こんな経験から、きっと他の外国人も同じように困っているだろうと思い、自らジャズスポットを紹介する英語のサイトを立ち上げました。各スポットへの行き方や席数はもちろん、お店の雰囲気やライブの様子、さらにジャズに関するニュースやイベントを英語で紹介しています。また、podcastでおすすめの音楽を聴いてもらうこともできます。日本語のジャズガイドのサイトは結構あるので、僕のサイトの利用者は主に外国人。「いつも迷っていたので助かった」というコメントをもらっています。

ジェームスさんにとって日本のジャズ喫茶は新鮮だったとか。
実はジャズ喫茶は日本ならではカルチャーです。そんな伝統はアメリカにありません。もちろん Jazz CafeとJazz Barという所はありますが、その雰囲気は日本のものとはかなり違います。私が日本で初めてジャズ喫茶に行ったときは、「こんな風にお客さんが無言でジャズを聴く店があるのか!」ととても驚き、嬉しかったですね。でも多くの外国人はこの素晴らしい文化をほとんど知りません。僕はこうした日本のジャズスポットの素晴らしさを世界の人たちにもっと知ってもらいたい。日本には他にもアニメやJポップのように、いわゆるクールジャパンと言われる独自のカルチャーがあり、世界も注目しています。でもまだそれらの魅力がうまく世界へアピールしきれていないと思います。こうした日本ならではの文化をもっと世界に発信していくことも、グローバル・コミュニケーションの一つではないでしょうか。

ジャズスポットの取材では、どんなことを心がけていらっしゃいますか?
ジャズバーのマスターは高齢の方が多く、英語を話さない人がほとんどなので、必然的に会話は日本語です。最初は僕も何も話せずに音楽を聴いていることが多かった。でもたまにお気に入りの曲がかかると「このアルバム、よかったです」と片言の日本語で伝えるわけです。すると、“ジャズ好きな同志”だということが伝わり、一気に打ち解けた雰囲気になる。言葉は拙くてもジャズを語り合おうとしてコミュニケーションが生まれるんです。頑固そうなマスターもおすすめなどを聞くとみんなうれしそうに教えてくれますよ。
好きなものへの情熱は、言葉を超えて届くものなんですね。
日本人のサックス・プレイヤーの友人からこんな話を聞いたことがあります。彼は英語もほとんど話せないのに、楽器を手に単身でナイジェリアへ。タクシーでも「クラブに行ってくれ」と言うだけだったそうです。辿り着いたクラブでは「チャイニーズ、なぜここに来たんだ」と話しかけられたのですが、「I'm a sax player.」と言っただけでその日の演奏に飛び入りし、その後2週間も演奏したとか。こういうspiritsがあれば、言葉は不完全でも気持ちは通じ合うんだなと改めて思いましたし、彼は勇気があるなと感心しましたね。でもこれは音楽だけじゃなくどんなジャンルでもきっと同じ。自然や食べ物、スポーツなどどんなことでもいいから、同じ何かを愛する気持ちがあれば、言葉を超えて絶対に分かり合えると思います。流暢じゃなくてもいいから、まずその環境に飛び込んで話してみることですね。
日本人は間違った英語で話すのが恥ずかしくて英語でのコミュニケーションに苦手意識を持つ人がたくさんいます。拙い英語で話しかける勇気を持てないのが問題なのでしょうか?
日本や東アジアでは語学においてTOEICなどの資格を重視しますよね。これも「恥ずかしい」と思う壁をつくる原因ではないでしょうか。大切なのは資格を持っているかより、実際にコミュニケーションがとれるかどうかです。日本人は中学・高校で英語を学ぶし、海外のドラマやファッション、食事なども大好きですが、実際に外国人と話す環境にある人は少ないはず。だから本当に語学を身につけたいなら、もっと海外に飛び出すべきです。言葉が上達するだけでなく、マナーも身につきますから。教科書で言語は学べてもビジネスマナーや“暗黙の了解”といったニュアンスまでは分かりません。僕も日本に来て暮らしていく中で時間をかけて文化を学んできました。現地に入ってしまえば拙くても話すしかないので上達も早いと思います。
流暢な英語ではなくてもネイティブに想いを理解してもらえますか?
僕の母はカリブ海にある島の出身で母国語は英語ですが、ニューヨークの英語とはちょっと違います。また、僕が育ったブルックリンには移民が多く、子どもの頃から南米、香港、パキスタンなどさまざまな国の人が身近にいて、いろいろな言語を聞いてきました。彼らの英語も発音や文法が違っていたりするけれど、生活していくために必死でコミュニケーションをとっているからその想いは充分に通じます。そのやる気とspirit、courage(度胸)があるから、彼らは“市民” になれるのです。

こうした環境にいたから、僕自身も日本のように英語圏じゃない国に行くことに抵抗はなかった。知らない国へ行ってその国の人たちと文化を分かちあうのがコミュニケーションの醍醐味ですよね。

日本の学生も日本人のいないアメリカの田舎町に行けば半年である程度は話せるようになると思います。ニューヨークやサンフランシスコなど日本人が多いところにいくのはもったいない。これは日本に来る外国人も同じこと。JETプログラムなどで九州のような地方に行った人は、東京に行った人より早く日本語にも馴染めるはずです。ちなみに大阪に行った時は、積極的に話しかけてくれる人が多くて、「ちょっとニューヨークに似ている」と思いました。東京では知らない人から話しかけられることは少ないですから。
最後にグローバルなコミュニケーションを高めたい皆さんへメッセージをお願いします!
僕もはじめから日本に馴染めたわけではありません。「もう帰りたい」と思うことは何度もありました。今でも僕は日本語の聴き取りが少し苦手で、日本に長いこと住んでいるのに恥ずかしいと感じることがあります。でもそれはためらわずに相手に聞き返せばいいだけのこと。みんな丁寧にゆっくりと言い直してくれますよ。言葉が拙くても分かりあいたいというspiritとcourageがあれば、必ずコミュニケーションはとれるはずです。

Get out there and go!
Don’t hesitate!
ジェームス・フセイン・キャッチポール
ブロガー、ポッドキャスター、ラジオDJ、ツアーガイド
アメリカ、ニューヨーク州出身。1997年に初来日。2007年、東京のジャズシーンに関する情報サイト「Tokyo Jazz Site」を立ち上げ、以来、世界中の映画監督やテレビ局などに情報を提供し日本のジャズの魅力を伝え続けている。現在は自身のポッドキャスト番組「OK Jazz」を配信する傍ら、The Japan Timesをはじめジャズ関連の執筆活動もしている。
Tokyo Jazz Site
http://tokyojazzsite.com/

★ジェームスさんが講師を務めるGCAIの講座
バイリンガルラジオDJに学ぶコミュニケーション術(仮)
https://gcai.jp/course/djcomm2
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